こんにちは。ひよっこ社労士ととです。
本日は事務指定講習の事例21と事例22の復習です。よろしくお願いします!
【目次】
事例21の復習
『岩佐正彦さんは、64歳の誕生日を迎え、令和6年11月1日に年金請求書の提出を行いました。
(1)老齢年金の請求において必要な手続きをしてください。
(2)岩佐さんが令和7年5月15日に亡くなりました。妻である知世さんによる未支給年金の請求を行ってください。』
※本事例では、国民年金・厚生年金保険の未支給年金を請求します。受給者の死亡に伴い、新たな年金・給付金の請求が発生する可能性がありますが、設問の都合により省略します。
上記事例に対して
を記入して提出しました。
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2.未支給年金・未支払給付金請求書
間違えた箇所
・年金請求書2頁目「年金の加入状況」
記入漏れです。
船員保険法等が目に入っていたので、てっきり特定の職種等の年金制度のみが並んでいて、それに該当する場合だけ記入する欄だと思い込んでいました。
ちゃんと「国民年金法」と「厚生年金保険法」もあったので、それを〇で囲む必要がありました。
事例21で深堀
課題書の設問では『※本事例では、国民年金・厚生年金保険の未支給年金を請求します。受給者の死亡に伴い、新たな年金・給付金の請求が発生する可能性がありますが、設問の都合により省略します。』と記載がありますが、せっかくの機会なので旦那さんの死亡に伴い妻である知世さんに発生する可能性がある年金・給付金について深掘りしてみます!
1.遺族基礎年金
まず、国民年金法「遺族基礎年金」について受給できる可能性があるのか考えてみたいと思います。
【死亡日要件(死亡した被保険者の要件)】
死亡した夫の正彦さんが❶から❹のいずれかに該当する必要があります。
❶ 被保険者の死亡
❷ 被保険者であった者で日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満の者の死亡
❸ 老齢基礎年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が25年以上)の死亡
❹ 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者の死亡
➡被保険者には第1号、第2号、第3号とあります。
正彦さんは64歳なので第1号には該当しませんが、現在もフルタイムで再雇用されているという記載があるので第2号に該当しそうです。(=❶に該当)
また、昭和55年4月1日~平成7年7月31日(15年4か月)厚生年金に加入、平成8年8月1日~令和6年11月1日(28年3か月)厚生年金に加入しているため、❸にも該当しますので、被保険者要件は問題なさそうです。
【保険料納付要件】
『死亡日要件❶又は❷に該当する場合にあっては、その死亡した者について、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があるときは、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が、当該被保険者期間の3分の2以上であることが必要』
上記の厚生年金の加入期間により、保険料納付要件も問題なさそうです。
【遺族の範囲】
続いて、遺族の確認です。遺族基礎年金の受給者となることができる遺族は以下のとおりです。
❶ 配偶者… 遺族の範囲に属する子と生計を同じくしていること
❷ 子………現に婚姻しておらず、かつ、
▪ 18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にある
又は
▪20歳未満であって障害等級(1級又は2級)に該当する障害状態にある
課題書を見ると、「現在の妻以外との婚姻歴はなく、加給年金の対象となる子はいません。」と書かれています。すなわち、遺族の範囲に属する子は存在していないことになります。正彦さんの死亡に伴う遺族基礎年金の請求は発生しなさそうです。
2.寡婦年金
妻:知世さんは昭和42年8月31日生、正彦さんが亡くなった令和7年5月15日時点で65歳未満のため、寡婦年金についても確認してみます。
【支給要件】
寡婦年金は、次のいずれにも該当する必要があります。
❶ 保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が10年以上である夫が死亡
❷ 夫が「保険料納付済期間」又は「学生納付特例期間及び納付猶予期間以外の保険料
免除期間」を有していること
❸ 夫が老齢基礎年金の支給を受けていない
❹ 夫が障害基礎年金の支給を受けていない
❺ 夫の死亡の当時夫によって生計を維持していたこと
❻ 夫との婚姻関係(内縁関係を含みます)が10年以上継続していたこと
❼ 65歳未満の妻であること
➡正彦さんは、老齢基礎年金の受給を開始していたため、❸に該当せず、知世さんに寡婦年金の受給権は発生しません。
3.死亡一時金
遺族基礎年金の支給を受けられる者がいない場合等、保険料の掛け捨て防止のための一時金です。
【支給要件】
死亡一時金は、次のいずれにも該当する必要があります。
❶ 死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間等の月数を合算した月数が36月以上である者の死亡(任意加入被保険者・特例による任意加入被保険者の期間を含む)
❷ 死亡した者が老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがない
➡寡婦年金同様、正彦さんは、老齢基礎年金の受給を開始していたため、❷に該当せず、受給権は発生しません。
ちなみに、死亡一時金を受けることができる遺族は、
「死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの」です。
4.遺族厚生年金
最後4つ目、遺族厚生年金は受給できる可能性があるのか考えてみたいと思います。
【死亡日要件(死亡した被保険者の要件)】
死亡した夫の正彦さんが❶から❹のいずれかに該当する必要があります。
❶ 被保険者の死亡
❷ 被保険者であった者で被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡
❸ 障害等級の1級又は2級の障害厚生年金の受給権者の死亡
❹ 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者)又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上である者の死亡
➡正彦さんは❶、❹に該当するのでこちらの要件はクリアしていそうです。
保険料納付要件についても、遺族基礎年金と同様のため問題なさそうです。
【遺族の範囲】
続いて、遺族の確認です。遺族厚生年金の受給者となることができる遺族は以下のとおりです。
▪妻…年齢、障害状態などに関係なく遺族となります。
▪夫・父母・祖父母…55歳以上であること
▪子・孫…現に婚姻していないこと
かつ
① 18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にあること
又は
② 20歳未満であって障害等級の1級又は2級に該当する障害状態にあること
➡遺族基礎年金では子がいない妻は受給要件を満たせませんでしたが、遺族厚生年金では子の有無は問われていないため、妻の知世さんに受給権が発生しそうです。
結論、事例21において、正彦さんの死亡に伴い、妻の知世さんに発生する可能性がある年金は遺族厚生年金のみだと思われます。個人的には子の有無で遺族基礎年金の受給の可否が左右される点が、遺族厚生年金と異なり、肝だと思っています。
事例22の復習
『本谷正巳さんは、人工透析を行う必要のある慢性腎不全を患っています。「特定疾病療養受療証」の交付を受け、病院窓口での負担を自己負担限度額までに抑えることにしました。必要な手続きをしてください。本人の自宅に送付を希望するものとします。』
※医師の証明欄の記入は不要です。
上記事例に対して
- 健康保険特定疾病療養受給証交付申請書
を記入して提出しました。
1.健康保険特定疾病療養受給証交付申請書
こちらも問題なく記入できていましたが、「特定疾病療養受給証」自体の復習をしておきます。
特定疾病療養受療証は、医療機関の窓口に提示することで特定疾病の自己負担額が1つの医療機関につき1か月1万円(※)までとなるものです。
対象となる疾病は、長期にわたり高額な医療費が必要となる厚生労働大臣が指定するもので、以下のとおりです。
1.先天性血液凝固因子障害の一部
2.人工透析が必要な慢性腎不全
3.血液凝固因子製剤の投与に起因するHIV感染症
(※) 人工透析患者のうち70歳未満の上位所得者(標準報酬月額が53万円以上)については、自己負担限度額が20,000円。
自己負担が緩和され、支払上限も明確になるので助かりますね。
おわりに
今回は事例21「年金請求」、事例22「特定疾病療養受療証」の手続きについて復習となりました。
今の事務所ではいずれもあまり行うことががない手続きですが、社労士たるもの年金を蔑ろにはできないのできっちり復習です!
今回も読んでいただきありがとうございました。
次回は、事例23、事例24について復習したと思います!
ではまたー